今こそ人間的尊厳を守る教育を=多発するいじめ問題をめぐり、市教組は訴えます!=

2006年11月8日
京都市教職員組合中央執行委員会

 いじめによって、子どもたちが自ら命を絶つ事件が続発しています。京都市教職員組合は、子どもたちの命と人間的尊厳を守る立場から、いじめ問題解決のために全力をあげて取り組むとともに、その背景や原因を明らかにしつつ、保護者・地域とともに共同の取組をすすめることを訴えます。

なにがあっても「いじめ」は絶対許せない!

 子どもたちの成長と発達を保障すべき学校において、人間的尊厳を否定する「いじめ」など絶対あってはなりません。「いじめは昔からあった。」「いじめられる側にも問題がある。」という考えは、結果としていじめを見逃し,より深刻な事態にいたってしまうことになります。

 福岡県の事件について教師がいじめを誘発する言動を行なっていたと報じられています。子どもを守るべき教師が、「いじめ」に実質的に加担するなど、絶対にあってはならないことです。直接責任を負って教育にたずさわる教職員には、どのような事情があったとしても、子どもたちの人間的尊厳の尊重をつらぬくことが求められます。

 今回のような悲劇を2度と起こさないために、一人ひとりが人間として大切にされる教育をすすめることを呼びかけるとともに、教職員組合としても全力を尽くす決意です。

過度の競争がゆがみを生み出している

 背景には、人間の尊厳までむしばむ「格差社会」「過度の競争」と、人を人として大切にしない社会的風潮があります。国連子どもの権利委員会は、日本の子どもが「高度に競争的な教育制度等によって、ストレスにさらされ、その結果、子どもたちの成長・発達に精神的・肉体的歪みを生じている」と指摘し、是正勧告を出しました。

 残念ながら教職員の中にも、「できる子・できない子」などの見方をし傷つけてしまう言動をとったりすることがあります。職場の中での相互批判や教育的論議・学習をおおいにすすめる必要があります。

 同時に、その背景には、「忙しすぎて、子どもの出しているサインを見落としてしまう」「子どもと触れ合う時間が決定的に少ない」などの多忙化があります。30人学級の早期実現や多忙化の解消は急務です。

隠蔽体質の背景にあるもの

 学校や教育委員会が事件を隠蔽していたことの背景には、文科省・教育委員会による「いじめ発生件数はゼロ以外は認めない」などの「ゼロ報告」や、「前年度より半減させる」などの「数値目標」の押しつけが背景にあります。形だけの報告をさせ、数値目標で学校を管理する行政の姿勢こそ問題です。

 教員に対し、「あなたの指導がなっていないから」と、一面的に「自己責任」のみを強調する管理職や指導主事の「指導」が行われています。その結果、問題が発生しても「だれにも相談できない」などの実態も生まれ、「自分のクラスでなくてよかった」などととらえてしまう傾向さえ生まれています。京都市教育委員会は各学校にいじめ問題についての「点検項目」表を配布し、取組をまとめて報告させています。全教職員に記名させ機械的に4段階で自己評価させ提出を強要することは、実態をありのまま交流し集団的な取組をすすめることを阻害しかねません。教職員をS・A・B・*で4段階評価する教職員評価システムなどは、いっそう学校の隠蔽体質に拍車をかけています。

 教育委員会や管理職が、何でも問答無用のトップダウンで押しつけるのでなく、集団的に取り組むことができる風通しのいい職場づくりをすすめてこそ、「いじめ」問題の解決の前提になります。

父母と力を合わせてこそ

 教育をめぐる諸課題は、いまや、学校と教師の力だけで解決できるものではありません。学校がすすめている教育活動や取組について、必要な配慮をおこないつつその困難もふくめて日常的に父母に情報公開し、力をあわせて問題の解決に当たることが大切です。

今、「いじめ」から子どもたちを守る、「いじめ」をさせない学校づくりを!

学校・教職員の取組
  1. 今、教職員集団が、または各教職員が、子どもたちの人間的尊厳を守る姿勢の表明を!
    • 被害者の立場に立ち、寄り添う姿勢を示すことが大切です。「命の尊さ・大切さ」の指導と同時に、教職員が「全力で守る」姿勢を表明することが必要です。
    • 加害者に対し教職員の毅然とした姿勢を示すことと同時に、その心情や様々な家庭・友人関係などの背景を理解し、寄り添うことが必要です。
  2. 学級・学年の枠を超え、実態の交流・把握と取り組みの交流を!
    • すべてを担任まかせにせず、学年集団・学校全体で実態把握・分析と方針の確立を行う中で、担任の思い・子どもたちとの関係を尊重することを大切にしましょう。
    • 「子どもをどう理解するか」など、教職員の学習・論議・研修をする体制の確立を行いましょう。
    • 必要な場合は、関係機関との連携をとり、緊急対応できる体制を確立しましょう。
  3. 子どもたちに、発達段階に応じて自分たちの問題として問題を投げかけ、論議・意思表明・アピール発表などの取組を!
    • 児童会・生徒会での論議とアピール活動などの取組をすすめましょう。
    • 学級での集団づくりの取り組みの交流や研修をすすめましょう。
  4. 「サイン」見逃さず、子どもたちと触れ合う時間の確保を!
    • 子どもたちと実際に触れ合う時間をどうしたら増やせるのか職員会議・研修会などで話し合いましょう。その中で、多忙化の解消のために、要求書にまとめ、校長交渉などに取り組みましょう。
    • 複数の目で子どもたちを見て、子どもの様子を話す時間を確保しましょう。
父母・地域と力を合わせて
  1. 日常的に、学校・学級の実態の共有を!
    • 通信・参観などで困難も含めて、発信しましょう。
    • 一方通行の「学校方針説明」でなく、悩みの交流もできる学級懇談会の工夫をすすめましょう。
  2. ひとりぼっちの父母をつくらない!
    • 「何でも話せる」、相談できる場づくりを、PTAや地域の中でつくる取組をすすめましょう。
    • 分会で教育懇談会の開催をすすめましょう。

以上

 

 

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