市教組Q&A「教員免許更新制度」

すべての教員の身分保障を実現するとともに、 免許更新の負担軽減のために教育行政(府・市教委)は条件整備を行え!

2008年6月13日(金)  市教組中央執行委員会

はじめに
改悪教育基本法(〇六年十二月)の具体化として、「教育三法」(学校教育法・地方教育行政法・教員免許法及び教育公務員特例法)の改悪が、〇七年六月に参議院で強行されました。これらの改悪は、「戦後レジームからの脱却」を掲げ、「教育改革」を政権の重点政策とする安倍前首相が、教育基本法を改悪し、第二弾として、その理念を具体化した内容となっています。

教員の身分を不安定にする更新制度
こうした中で改悪された教員免許法は、〇八年三月に、関係省令が改正され、〇九年四月から実施されることになりました。しかし、拙速な国会上程、不十分な審議で導入が決められたこの制度は、終身免許であった教員免許を一〇年間の有効期限を設け、しかも、過去に取得した免許にも遡って適用するという不当なものです。そして、免許更新の際に講習が義務づけられ、講習後、修了認定試験が行われます。期限内に講習を受けなかったり、修了認定が行われない場合は、免許が失効してしまいます。

矛盾多い欠陥制度
さらに、この制度は、多くの矛盾と不鮮明な部分があります。免許を必要とする職種は、医師、看護師、薬剤師、弁護士、公認会計士、建築士などたくさんありますが、免許に有効期限を設け、更新制度が導入している職はありません。また、同じ公務員でありながら、教員だけが期限付きという不安定な身分にされてしまいます。〇二年の中教審答申では、教員免許更新制について「現時点におけるわが国全体の資格制度や公務員制度との比較において、教員のみ更新時に適格性を判断したり、免許取得後に新たな知識技術を習得させるための研修を要件として課すという更新制を導入することは、なお慎重にならざるを得ない」として、導入を見送った経緯があります。今回の導入は、こうした中教審答申の懸念を何ら解消したものとはなっていません。改悪教育基本法でさえも「教員については、・・・その身分は尊重され、待遇の適正が期せられる」としています。  文科省は、制度の目的を「その時々で教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身につけることで、教員が自信と誇りを持て教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目指す」としていますが、研修ではなく何故、免許を更新しなければならないのかについては全く触れていません。

教育を歪める更新制
私たちは、教員が免許剥奪におびえながら教育をすることは、教育活動や子どもたちに対しても悪影響を与えかねないことや、現在の教育をめぐる問題や子どもたちの抱える諸問題を、教員の資質の問題にすり替え、教育内容や教員の管理統制を強化しようとするこのような制度改悪を許すことはできません。

Q1 免許の有効期間は何年になるのですか?その有効期限はいつまでですか?
*A〇九年度四月以降に授与される新免許状の有効期間は十年間です。それ以前の旧免許状の場合は引き続き「有効期間の定めのない」ものとなります。 しかし、更新講習対象者で期限までに講習の修了確認を受けなかった場合は、その免許状が失効します。  有効期限は、満三十五歳、四十五歳、五十五歳になった年の年度末までです。その年度末の二ヶ月前(一月三十一日)までの二年間の間に講習を受け、修了認定の確認がされなければなりません。

Q2 いつから制度が始まるのですか?
*A〇九年(平二十一年)四月一日から免許更新受講期間になります。制度導入最初の対象者は、一一年三月末(平二十二年三月末)で満三五歳、四五歳、五五歳(生年月日が昭三十年、四十年、五十年の四月二日から翌年四月一日)の教員です。従って、一一年三月末現在で五五歳以上の教員は免許更新の対象外となります。 栄養教諭免許の更新受講期間は一四年(平二十六年)二月一日から開始されます。

Q3 講習の受講対象者は誰ですか?
*A現職の教員、教育の職にあるもの(指導主事など)、採用内定者、臨時任用(又は非常勤)教員リスト登載者、過去に教員として勤務経験のある者が受講することができるとなっています。  現在、教員でない又は教員になる意思のない、いわゆる「ペーパーティーチャー」は更新する必要はありません。また、更新しなくても免許は失効しません。ただし、その後、教員になろうとする場合は、更新講習を受講し、修了確認を得なければなりません。
●このように更新受講対象外の人は、免許が失効しないのに、受講した教員が、修了認定されなかったため免許が失効するという大きな矛盾が生じます。

Q4 免許が失効するとどうなりますか?
*A有効期間の満了日(修了確認期限)までに、更新講習を受講・修了しなかった場合や、受講・修了しても更新手続きに関する申請をしなかった場合は免許が失効します。  文科省は、免許が失効した場合、免許状を取得した際の教育課程の単位まで無効にはならないので、改めて大学で教育課程を受講し、単位取得はする必要はなく、更新講習を受講・修了するだけで、免許状の再授与を受けられるとしています。 しかし、任命権者である京都市教委は免許が失効したら失職するとしています。つまり教育公務員としての身分がなくなるということになります。
●こんな理不尽ことはありません。ベテランといわれた教員が、今の学校現場の多忙化の中、講習未了や申請手続きのミスなどで、突然失職し教壇を去らなければならないとしたら、子どもたちの教育にとっても、大きな損失となります。

Q5 講習を免除される人があるのですか?
*A校・園長、副校長、教頭、(主幹教諭・指導教諭)、教育長、指導主事、更新講習の講師、教科指導・生徒指導等の功績が特に顕著な教員(優秀教員表彰を受けた後の一回のみ免除対象となる)が、免許管理者に申請することで受講せずに免許更新ができることになっています。  京都市の場合、毎年数百人規模の「教育実践功績表彰」を行っていますが、表彰基準が曖昧なため、免除対象にするかどうかは、今年度中に府教委が決定することになっています。
●これは講習の免除者を設けることによって、教員を分断し階層化を固定化しようとするものです。

Q6 有効期限の延長はありますか?
*Aあります。休職中の人、産休・育休・病気休暇・介護休暇中の人、海外派遣中の人、「指導改善研修」中の人、専修免許状取得のための課程に在職中の人、教員となった日から、有効期間の満了日(又は修了確認期限)までの期間が二年二ヶ月未満である人などの場合、免許管理者に申請を行いその事由が終了してから受講することができます。

Q7 複数の免許所有者は、それぞれの免許ごとに受講するのですか?
*A複数の教科の免許は、主たる免許の更新によりすべての免許が更新されます。三十時間の更新講習を修了することにより、すべての免許状の有効期間が更新されます。(最後に授与された免許状を基準に有効期間が統一されます)  ただし、養護教諭、栄養教諭は、選択講習の中で、それぞれの「職」に対応した選択講習を受けなければなりません。

Q8 講習時間と内容はどうなっていますか?
*A二年間の間に三十時間の講習を受け、最後に修了認定の試験を受けることになっています。六時間(一日)が一単位となっています。講習は、基本的に長期休業中や土日に開講されます。  その内訳は、①「教育の最新事情に関する事項」必修十二時間以上 ②「教科指導・生徒指導その他教育内容の充実に関する事項」選択十八時間以上となっており、教諭・養護教諭・栄養教諭を主な受講対象とする講習を受講しなければなりません。

Q9 講習を開設できるのは?
*A大学・大学共同利用機関、指定教員養成機関、都道府県・政令指定都市教育委員会などで開設されます。
●本来、教員免許は教員養成を行う大学など教育機関で行われるべきものです。任命権者である教育委員会が、教員の身分を左右する更新講習の開設者になることは、極めて不適切です。

Q10 修了認定は誰が行うのですか?
*A講習の開設者が行います。講習終了後に認定試験が行われ、認められた場合に修了認定されることになっています。複数の大学で受講した場合は、大学ごとの履修認定が必要です。修了認定が行われたら、必ず京都府教育委員会(免許管理者)に申請し、更新講習修了確認を受けなければなりません。免許状の有効期限までに修了認定・確認が行われない場合は免許が失効し、教職を失うことになります。
●また、講座の開設だけでなく、市教委指導主事が講座の講師ができることになっています。講習内容の「教育の最新事情に関する事項で」意見が分かれる教育政策について、講習や試験が「踏み絵」にされ、教員に対する脅しと管理強化に利用される危険性を含んでいます。

Q11 講習費用は誰が負担するのですか?
*A受講料は開設者(大学など)ごとに決定し、受講者の自己負担となると文科省は説明しています。一人約三万円ともいわれています。受講者が直接開設者に支払うことになっています。
●市教委は免許は個人の問題だから自己負担が当然だとしています。しかし、国の施策として制度変更をしたわけですから、受講者の全額負担は納得できるものではありません。

Q12受講するときの勤務の扱いはどうなるのですか?
*A市教委は長期休業期間中については「職免」扱いにするとしています。受講の予定を前もって管理職に申し出て下さい。
●土・日の受講についても、教員の身分や本務にかかわる講習ですから、振り替えの対象として扱うべきだと要求をしていきます。

Q13 今年度「予備講習」(試行講習)が行われると聞きましたが?
*A来年度(制度初年度)の対象教員に対して「予備講習」が行われます。京都では、京都教育大学を会場として、市内八大学が連携した試行講習が八月に行われる他、京都大学、仏教大学、ノートルダム女子大学でも講座が開設されます。今年度は希望者が対象ですが、定員が超えた場合は抽選となります。

Q14 予備講習の費用や修了認定はどうなるのですか?
*A受講料は無料ですが、交通費等は自己負担です。受講し試験を受け、修了認定されれば「予備講習修了(履修)証明書」が発行されます。その証明書を添えて、二〇〇九年四月一日から二〇一一年一月三十一日日までの間に、京都府教育員会に受講免除申請をすれば、来年度から実施される更新講習が免除されます。但し、三〇時間に満たない場合は不足分の講習を受けなければなりません。

【市教組の基本姿勢と今後の取り組み】
学校現場では、市教委から配布された資料をもとに管理職から説明が行われているようですが、不十分な説明やわからない部分がたくさんあるとの声があがっています。市教組はこれから具体的な問題で折衝・交渉を行います。 普通に教育活動を行っている教員に失職の不安を持たせる制度は許せません。市教組は①教員免許更新制反対、②免許の失効=失職のシステムをやめさせること、③講習にかかる費用は公費負担とすること、④受講修了者はすべて認定することなどを基本的な要求として、国や教育委員会に対して要求運動を強めます。

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