市教組超勤訴訟判決 ―京都市に賠償命令!―

市教委には教職員の命と健康を守る責務が
4月23日、京都市教組組合員9人(塩貝光生団長)が、「超過勤務を是正して、もっと子どもたちと向き合う時間を!」と京都市を相手に訴えた超勤裁判で、京都地裁は、教育行政の違法性を認定し、原告一名に安全配慮義務違反として55万円の慰謝料を支払うことを命じる判決を下しました。

安全配慮義務とは…「使用者(当局)は仕事の負担によって労働者が心身の健康を損なわないよう配慮する義務があること。さらに、生命や健康を害するような労働負担(長時間労働など)や危険がある場合、これを回避する責任があること。

■市教委に勤務管理義務
判決は、過酷な勤務を余儀なくされている教職員に対して、「教育職員についても生命及び健康の保持や確保(業務遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことのないように配慮すること)の観点から勤務時間管理をすべきことが求められている」、さらに「……その勤務内容、態様が生命や健康を害するような状態であることを認識、予見した場合、またはそれを認識、予見でき得たような場合にはその事務の分配等を適正にする等して当該教育職員の勤務により健康を害しないように配慮(管理)すべき義務(勤務管理義務)を負っている」と判示しました。
■長時間労働の放置は違法
これは、京都市教委には、安全配慮義務があることを明らかにするとともに、心身の健康を損なうような長時間勤務を放置することは違法だと断罪した画期的な判決です。
そして、原告の寒川正晴さんについて、日々の時間外労働や土日に吹奏楽部の引率、研究発表の冊子づくりを行うなどの長時間労働を行ったことと、それを市教委及び校長が放置したことを認めました。さらに、「過度な時間外の勤務がなされた場合には、肉体的のみならず精神的負荷が強いと推認できる……健康の保持に問題となる程度の少なくない時間外勤務をしていたことを踏まえると、それによって法的保護に値する程度の強度のストレスによる精神的苦痛を被った」とし、安全配慮義務違反を認め、市教委に損害賠償を命じました。
■市教委の時間管理放棄を断罪
一部とは言え、教育行政の違法性を認めたことは大きな前進と言わなければなりません。特に、勤務時間管理の必要性や長時間労働に対する安全配慮義務を正面から認めたことは、京都市教委が「教員の勤務は時間的計測になじまない」と述べて、現在に至るも教職員の勤務実態調査や勤務時間管理を行っていないことを断罪したものと言えます。
■超勤せざるをえない実態無視
しかし、超過勤務が常態化していることの違法性については、従来の判決を踏襲し、「自由意思を強く拘束するような状況下でなされていたと認めるに足る証拠(直接の職務命令など)がない」ことを理由に、超過勤務は「自主的、自発的な」職務遂行とし、京都市や管理職の違法性を認めませんでした。さらに、超勤手当の請求についても、自主的、自発的であることを理由に否定しました。これは、教育行政が持ち込む様々な教育施策や事務仕事などで、超過勤務を余儀なくされている教職員の実態を無視するもので断じて容認することはできません。
さらに、裁判所での校長の証言(「義務的にやってもらっていた」「私の指示と考えてもらってもいい」)をも無視するものです。
私たち原告団・弁護団及び教職員組合は、判決の積極面を生かすとともに、事実誤認や誤った解釈については、引き続き控訴して、その是正求めてたたかいを継続するものです。
■全国とマスコミが注目!
判決は不十分なものではありますが、9人の原告と京教組・京都市教組のたたかいは、全国から注目されるとともに、教職員の超過勤務をめぐる状況に大きな変化をつくり出す力となりました。
第1に、文部科学省が40年ぶりに教員の勤務実態調査を行い、マスコミも教師の働き方の問題を大きく報道するなど、大きな社会問題となってきたこと。第2に、行革推進法で、教職員削減が決められている中、文部科学省が教員増を要求したこと。第3に、京都市教委を含む教育行政が、研修や研究指定の削減や提出文書の削減、預かり金等の実務の軽減など、超勤の縮減に足を踏み出したこと。第四に、労働安全衛生法の改正や厚生労働省の通知などから、教職員の勤務実態の把握や長時間労働を余儀なくされている教職員に対する「医師による面接指導」の実施が具体化されつつあること。第五に、文部科学省自身が時間外手当導入を検討していること、があげられます。
■新たなたたかいの出発
私たちは、このような運動の前進に確信をもつとともに、大幅な教職員増の実現、その仕事の重要性や困難性に応じた給与水準の確保(教職調整額4%維持など)と、労働時間の把握と労働基準法37条に基づく超過勤務手当制度実現をめざし、全国の教職員、父母・市民とともにたたかいを前進させる決意です。引き続きのご支援・ご協力を呼びかけるものです。

■京都市教職員組合 執行委員長 新谷一男
司法の手によって、一部ではあるが、京都市教委による教職員の働かせ方を、きびしく断罪した判決が出された。文部科学省も、京都府教委もわれわれの運動の中で、教職員の長時間過密労働に対し、実態調査を行い、超過勤務の実態を認め、労働安全衛生の充実や、是正のための方途を示唆したり、教職員の増員や法整備についても改善に向けて取り組み、検討を加えている。しかし、京都市教委はこれまで実態調査もせず、教職員の勤務時間管理もおざなりにし、労働安全衛生の徹底にも具体策を講じてこなかった。
判決では、教職員の長時間勤務が健康を害し、命まで危険にさらされることのないように、使用者として健康を害しないような勤務管理の義務が生じることを強調している。
今年度から改正労働安全衛生法によって、50人以下の職場でも、勤務時間管理を徹底し、月に100時間以上超勤している教職員に、医師による面接指導や健康を害することがないように、働き方の改善をしなければならなくなった。
京都市教委は、この判決を尊重し、教職員の長時間勤務改善のための具体策を講じると共に、ゆとりをもって子どもと向き合う時間の確保のために、早急に教職員の働き方を改善するべきだ。

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