『フッ化物洗口Q&A』フッ化物洗口を考える討議資料

京都市教職員組合 養護教員部

 04年8月に小学校と養護学校の校長を対象に、「フッ化物洗口」の研修会が市教委主催で行われました。07年度までに、すべての小学校と養護学校で実施するようにとの内容でした。そこで養護教員部では、フッ化物洗口の全校実施について学校で論議ができるよう、昨年11月に討議資料を作成し、全養護教員宛に送りました。

 最近、市教委は各校長にフッ化物洗口を実施するように、指導を強めてきています。

 そこですべての学校に討議資料を配付することにしました。

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Q1 フッ化物洗口ってなに?
A

 むし歯予防として、フッ化ナトリウム(ミラノール)を水で薄め、口にふくんでブクブクと1分間うがいをすることです。(1週間に1回10ml)

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Q2 効果は? フッ素は本当に心配ないの?
A

 フッ素の安全性・有効性をめぐって世界の学者の間で論争が続いています。フッ素推進側や市教委のマニュアルには効果と安全性ばかりが記載されていますが、両方の見解があることを公表すべきでしょう。また、ミラノールの添付書も公表すべきです。

推進意見

 フッ素は、人体や自然界の水や食物にも必ず含まれている、自然環境物質で、微量栄養素。正しい用法と用量で用いれば、人体に悪影響を及ぼすことはなく、むし歯発症の抑制に多大な効果がある。安全性についてはWHOやFDI(国際歯科連盟)などが認めている。

慎重意見…インターネットなどに挙げられているもの。

 ヒ素や放射線も自然界にある。フッ素は劇物で、洗口水を全量飲むと危険(体重あたりの急性中毒量は2mgが安全域とされているが、実験の結果0. 5mg以下とも言われている)。斑状歯の発生頻度の上昇。WHOは6才未満にフッ化物洗口を禁忌としている。骨肉腫や他の癌、特に咽頭癌や口腔癌の発生頻度の上昇。若い母親がダウン症児を産む頻度の上昇。骨フッ素症と骨折の頻度の上昇など。集団予防接種も個人接種となった時代に、伝染しないむし歯になぜ集団予防なのか、矛盾している。

ミラノールの添付書

 洗口で使用する「劇薬、指定医薬品 ミラノール」の添付書を情報公開するべきだと市教委交渉でも訴えました。以下は添付書からの抜粋です。

  1. 嚥下を避ける目的で、下を向いて行うよう指導…
  2. 洗口後の薬液は十分にはき出させ、その後1~2回たまった唾液を吐き出すようにすれば水で口すすぎさせる必要はありません。
  3. 【使用上の注意】
    1. 副作用
      本剤は使用成績調査などの副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。
      過敏症
      頻度不明
      過敏症状が現れたとの報告があるので、そのような場合には、直ちに洗口を中止させること。
    2. 適用上の注意
      4)誤って飲用し、おう吐、腹痛、下痢などの急性中毒症状をおこした場合には、牛乳、グルコン酸カルシウムなどのカルシウム剤を応急的に服用させ、医師の診察を受けさせること。

(※下線は引用者による)

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Q3 むし歯予防にどうしてもフッ素が必要なの?
A

 子ども達の口腔の問題はむし歯だけではありません。むし歯は近年減少してきており、歯肉炎や歯周病などが増加してきています。しかし、フッ素で歯肉炎や歯周病は防ぐことはできません。生活習慣の見直しや正しいブラッシングといったむし歯予防と同じ方法で防げるのです。むし歯予防のために薬を使用し予防する必要性があるのか疑問です。むしろ、健康教育を充実させ、口腔衛生を進めることが学校教育としての役割であるのではないかと考えます。

むし歯は減ってきている。誤飲して、腹痛があれば牛乳を飲ませるなど、危険な気がする。どうしてフッ素なの?

文科省の学校保健統計によると(05.12.8)

 「ぜんそく最高に、虫歯は引き続き減少」と発表されました。子どもの実態に則した健康管理を推進することが必要です。

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Q4 なぜ、急にフッ化物洗口がでてきたの?
A

 2000年3月に国は「健康日本21」の推進について地方自治体に対する通知文を出しました。それを受けて京都府では2001年3月「きようと健やか21」を健康づくりの手引書として、フッ化物応用を積極的に勧めるとしています。また、2003年1月厚生労働省は、各都道府県知事宛に「フッ化物洗口ガイドラインについて」の通知を出し、「健康日本21における歯の保健目標を達成するためにフッ化物の応用は重要」としています。これを受けて、市教委は、2004年8月に、むし歯予防のため「フッ化物洗口」の説明会を実施し、その説明会後に校長に対して、「実施の方向で動くよう」に指導が行われました。私たちは市教委交渉で「強行実施しないで職場の民主的な話し合いを大切に」と申し入れました。

 実施にあたっては、器具や薬品にかかる費用は今のところ学校予算ではないとしていますが、その後は、学校予算や保護者負担ということが将来的に懸念されます。

 また、京都市では「学童う歯対策」を40年ほど実施していますが、この予算をなくしてしまうのではないかなど危惧されます。

日本学校歯科医会では…なんと 慎重姿勢

 05年3月、日本学校歯科医会では、集団フッ素洗口に対する見解をガイドブックで明らかにしました。「フッ化物応用は地域の歯科医療機関にゆだねてもよい。…学校歯科保健の役割は…ヘルスプロモーションを重視した保健教育が重要…。」等とし、「このガイドブックは、学校保健活動の中で学校歯科保健活動をどのように展開していくか、児童生徒の健康支援にとってフッ化物をどのように位置づけていくことが適当かなど、学校歯科医が考えるべき視点の参考になるように書かれたもので、学校でのフッ化物洗口の導入などを安易に実践しようとするものではありません。」(1、2頁)と集団フッ化物洗口導入に慎重な姿勢を表明しています。

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Q5 WHOでは
A

 WHO(世界保健機関)は1994年テクニカルレポートにおいて「6歳未満の子どもを対象にしたフッ化物洗口は禁忌である」としています。「禁忌」やってはいけないとしたのです。フッ素塗布についても「歯科的矯正を行っているために高度にむし歯になりやすくなっている人、レントゲン治療に伴って発生する口腔乾燥症のためにひどいむし歯が発生している人」こうした2つの場合の特殊な処置に限定されています。

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Q6 学校で実施するとどんな問題が考えられるの?
A

 フッ化ナトリウムは劇薬で致死量は子ども(体重30kg)で1g以下、大人は2. 2gと言われています。保管や洗口液作成では細心の注意が必要です。

(1)洗口液の作成はだれがどこでするの?

 養護教諭が行うことが考えられます。薬事法で養護教諭が薬剤を扱うことに問題があると思われますが、市教委のマニュアルでは「指示書」という名で、歯科医師の承諾がある為、法的にはクリアーしているというのです。しかし、大勢の子ども達が出入りする保健室で扱うことは危険を伴い、作成場所や保存場所など安全が保障されるのか疑問が残ります。また、責任の所在はどうなのでしょう。

(2)うがい中に誤って飲んでも心配ないの?

フッ化物洗口で15~30%がからだに吸収されるっていう学者もいるよ。副作用は何十年も経ってから現れる?

 フッ化物洗口では、年齢が低いほどまた、鼻づまりなどでも飲み込む割合が多いといわれています。市教委のマニュアルでは「一人分の洗口液全量飲み込んでも急性中毒は起こらない」とありますが、「安全」と言われている濃度が高く危険とされる意見もあります。また、「緊急処置としては、すぐに吐き出させ牛乳を飲ませる」とあります。これはまさしく毒物の処置で危険の証拠という意見もあります。

(3)アレルギー体質の子どもは心配ないの?

 実施マニュアルには、「アレルギーの原因となることもない」と記載されていますが、洗口剤の添付書に「過敏症状が現れたとの報告があるので、そのような場合はただちに洗口を中止させること」と明記されていることと矛盾しています。

(4)担任の指導や時間は?

今でも生徒指導で大変。洗口する子としない子がいて混乱しそう。準備や後片付けで授業時間も削られそう。むし歯は減ってきているのになぜ一律に薬で管理をするの?

 担任がクラスで、各自に容器からコップに配ります。児童はコップを洗い、列を作って並び、コップに10ml入れます。1分間ぶくぶくうがいをします。コップに吐き出し洗面所でコップを洗います。この間、15分間ほど。時間帯は、休憩時間や給食の後、朝の時間が考えられます。さらに担任は、洗口をする子しない子を判別したり、飲み込まないか、細心の注意がいります。うがいをしない子は水でさせるとありますが、したくない子の権利の保障はどうなのでしょう。洗口の時間を課外にするべきではと言う保護者の意見もあります。

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Q7 保護者への説明はどのようにされるの?
A

 希望調査書(承諾書)をとるということで、個人の自由が認められているように思われますが、保護者への説明は具体的方法や期待される効果、安全性の説明はあっても、とりわけ重要な危険性に関する情報がどれだけなされるか疑問です。少なくとも、ミラノールの添付書は情報公開されるべきです。

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Q8 もう洗口実施が決まった・すでに実施している時
A

 全国学校歯科医会見解にもあるように、安易にフッ化物洗口をすすめるものではないとあります。この点を確認しながら以下の点を検討しましょう。

 安全面に配慮が必要です。十分な討議をしましょう。

  • 薬品保管は、校長室の保管庫など、子どもの出入りの少ない鍵のかかる場所が適切です。
  • 洗口液作成作業については、保健室で安全にできるのか、どの場所が安全かを検討し、養護教諭だけがその作業にかかわることは避けなければならないでしょう。複数で作業をすることが大切です。
  • 救急時の対応を全職員で詳細にわたり確認しておくことが大切です。
  • 誤飲を防ぐためにうがい練習に時間をかけること。
  • アレルギー体質の子どもに十分配慮すること。
  • 鼻づまり・せきなど誤飲をしやすい時には洗口をしないことなども確認しておく必要があります。
  • 洗口しない子どもがいやな思いをしないように、実施時間帯を課外にするなども考慮すべきです。

 子どもたちには、薬に頼りすぎず、生涯を通じた健康教育をすすめていくことが大切です。

資料:京都市小学校のむし歯の推移(京都市教育委員会学校保健統計調査より)

  • 30年間で30%も、う歯所有率が下がっている。
  • 94年度から、健康診断の改訂があり、COをう歯としないことに伴い、統計上も急激に所有率が下がったと推測されるが、その後も下がり続けている。
  • むし歯の減少について、2005年度の学校保健統計調査の発表に当たり、文部科学省では、「歯磨き指導の浸透や、甘いお菓子を控えるなどの食生活の変化が背景にある」と見ている。また、自動販売機でジュース以外にお茶などが販売されるようになって、砂糖の消費量が減り、むし歯が減ってきたという意見もある。
京都市の歯の様子
  • WHOでは、2000年までに12歳児(中学1年生)のDMFTを3本以内にと言う目標を立てているが、京都市は、小学生はもちろんのこと、05年度統計によると12歳児のDMFTは1.52で、目標をはるかに達成している。
京都市小学校う歯状況
DMFT指数の比較
歯列と歯周病の変化

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