超勤縮減へ向けて具体策実現―2006年6月22日市教委交渉で基本合意―

 京都市教委は、府教委の通知を受けて、超勤縮減を目的に「週休日の振替」及び「泊を伴う学校行事の際の勤務時間の割振り」変更について市教協(市教組・市立高教組)に具体案を提案しました。それ以降八回の折衝を行い、基本姿勢や具体的な運用等について協議を重ね、六月二十二日に交渉を行い、基本的な事項を確認し妥結しました。この制度はあくまで実効ある超勤縮減を目的に行われるもので、職場での学習や管理職への申し入れなどを行って下さい。

週休日の振替について(6月22日市教委提示文書)

1.週休日の振替を行うことができる業務

 週休日の振替を行うことができる業務は、職員の給与等に関する条例(京都府条例)第37条第3項及び京都市教職員の給与等に関する条例27条の2第2項に定める業務(学校行事、職員会議、非常災害等に関する業務)に加え、当面は次の業務とする。

  • (1)学習活動
    新入生宿泊研修、学習合宿、土曜補習、総合養護学校における進路実習指導
  • (2)学校説明会
    自校での学校説明会の際の準備及び運営、自校での体験入学の際の授業及び実習、他校での学校説明会への児童・生徒の引率、総合養護学校高等部における入学相談
  • (3)入学者選抜
    入学者選抜試験の際の受付、監督及び採点並びに引率業務
  • (4)PTA活動
    PTA総会、役員会等の会議への参加業務
  • (5)学校教育活動に位置付けられる行事に参加する児童・生徒の引率
    〔具体例〕陸上記録会等の各記録会、春季総合体育大会開会式、大文字駅伝(事前検診、開会式を含む。)、全京都障害者総合スポーツ大会、1/2成人式など
    ※1 部活動は原則振替の対象としない。但し、学校として依頼を受け、学校教育活動に位置付けて、部活動の部員が参加・活動する場合に限って振替の対象 とする。
    〔具体例〕ブラスバンド部、和太鼓クラブの出演など
    ※2 市、市教委、府又は府教委の主催又は共催する行事以外の行事に児童・生徒が参加する場合、その行事が学校教育活動に位置付けられ、振替の対象になるかどうかについては、当分の間、教育委員会と事前に協議するものとする。
  • (6)市、市教委、府又は府教委の主催又は共催する行事であって子どもが参加・活動する行事の運営に関する業務で校長又は園長が必要と認めるもの
2.振替の方法等
  1. 週休日の振替等を行う場合、全日(8時間)あるいは半日(4時間)を単位として勤務日の始業の時刻から連続し、又は終業の時刻まで連続する勤務時間となるように勤務時間を割り振り、又は、割り振らないように行わなければならない。
  2. 週休日の振替により週休日に変更した日について、再度、勤務することを命じて振替を行うことはできない。

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週休日の振替についてQ & A

Q1「週休日の振替」とはどんな制度ですか。
A 「週休日」とは、土曜日・日曜日のことです。週休日は本来教職員にとって「勤務を要しない日」であり、勤務時間の割振りが行われていない日です。今回の制度は、週休日に勤務が必要な業務《市教委文書(1)~(6)》が発生した場合、本人の了解を前提に週休日に勤務を振り替えて、勤務した週休日の前四週間、後十六週間のいずれかの勤務日を週休日(半日単位も可)とするものです。市教委は振替可能な業務として右下の文書を交渉の席で配布しました。
Q2今回の制度導入の目的は何ですか? 
A 今回の制度導入の目的は、あくまで学校現場で蔓延している休日出勤などによる超過勤務を縮減することにあります。この制度の導入によって、休日勤務が常態化したり、週休日の勤務を拡大してよいということではありません。あくまで、現在やむを得ず休日出勤している教員の勤務を削減(総労働時間の短縮)するために「週休日の振替」制度を活用するものです。
Q3週休日の振替制度導入によって、週休日の勤務は命ぜられるのですか。
A そんなことはありません。そもそも「給特法」では教員には限定四項目《1. 学校行事に関する業務、2. 教職員会議、3. 非常災害等、4. 生徒の実習に関する業務(高校のみ対象)》以外の業務で超過勤務を命ずることはできません。今回の制度が導入されても、この法の趣旨は変わりません。市教委と組合の口頭確認文書の基本姿勢でも、「『四項目』以外の勤務についても、命じて行われるものでない」ことを確認しています。
Q4市教委の提示している六つの業務ともすべての学校が対象ですか。
A 形式的には(1)~(6)の業務は全校種が対象となります。しかし、市教委は説明で(1)~(3)の業務は基本的には高校及び総合養護学校の高等部を対象にしているとしています。さらに、交渉で組合に対し、「これが根拠になって小・中学校でも土曜補習をできるというものではない」と回答しています。
Q5(5)の学校教育活動に位置付けられる行事に参加する児童・生徒の引率についての基本的な考え方は? 
A (5)の項目については、市教委が「週休日に勤務している実態がある」として導入してきた項目です。市教組は、週休日は子どもにとっても休みであり、むやみに子どもが参加する行事を増やすことには反対です。振替対象になるからといって参加していない学校まで参加を拡大する必要はありません。参加する場合も学校での教育活動としての位置付けなどを職員会議等で論議して決める必要があります。
Q6(5)の部活動の位置付けはどうなっていますか。
A 部活動は今回の週休日の振替の対象業務にはなっていません。その理由の一つは府教委と京教組の間で部活動の位置づけや何を振替の対象にするのかについて協議中であり、京都市のみが先行して実施することはできません。今回※で対象にしているのは部活動として参加するのではなく、学校として出演依頼を受けて、学校を代表して参加する場合に限定して認められています。具体例としてはブラスバンド部や和太鼓クラブがあげられています。
Q7(5)の業務で市、市教委又は府、府教委の主催、共催以外の行事の取り扱いはどうなりますか? 
A 具体的には地域の諸団体の催しなどに学校への要請が行われることが考えられます。その際、最初に学校教育活動として児童・生徒の参加がふさわしい取り組みかどうかを吟味する必要があります。もちろん、児童・生徒の意向や担当する教員・顧問の意向を確認することも必要です。さらに、これらの業務を振替対象にするかどうかについては、市教委と組合が交渉及び折衝で確認して決定されることになっています。校長の一存で振替対象業務とすることはできません。
Q8(6)の子どもが参加・活動する行事の運営に関する業務で校長又は園長が必要と認めるものとはどういう業務ですか?
A 具体的に言うと大文字駅伝、全京都障害者総合スポーツ大会などで、自分の学校の児童・生徒は参加しないが、役員になっていてどうしても参加しなければならない場合などに適用されます。この場合もあくまで、市、市教委又は府、府教委が主催、共催する行事で、他の業務と同様、本人の了解が必要であり、校長・園長が一方的に命ずることはできません。
Q9振替先を明示せずに業務をさせることはできるのですか? 
A それはできません。市教委との口頭確認文書にも「予め振替先を明示し、本人の合意を前提とすること」とされています。あくまで業務の依頼と振替先の明示、本人合意は一体のものです。管理職が一方的に振替先を決めて業務を要請することはできません。
Q10振替はどんな時間単位、時間帯でもいいんですか。
A いいえ、週休日の振替は一日(八時間)か半日(四時間)単位でしか行えません。さらに、始業時刻または、終業時刻に連続する時間でしか振替できません。勤務時間の中間(例えば十時~十四時)に割り振ることはできません。また、一度勤務時間の振替変更で、勤務を要しない日又は半日となった週休日(半日)に、再度勤務を命じることはできません。
具体例
4月29日春季総合体育大会開会式に生徒を半日(4時間)引率した場合の具体的流れ
  1. 管理職は原則的には4月1日より前に該当教員に引率の要請をする必要があります。
  2. (年度を挟むので4月1日以降になる可能性はあります)
  3. 管理職は要請時に、4月1日~8月20日(前4週・後16週)の期間に具体的に振替先を設定しなければなりません。例えば、その週の授業がない午後、入学式の午後(4月7日・今年度)、試験の日の午後などできるだけ、4月29日に近い日で設定し、どうしても設定できない場合は夏休みに設定することができます。
  4. 引率する教員は、振替先の設定を含めて管理職と協議し、引率業務を行うかどうか自らの判断で決定することができます。

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「泊を伴う学校行事の際の勤務時間の割振り」の変更についてQ & A

Q1「泊行事の勤務時間の割振り」制度導入の目的は何ですか? 
A この制度の導入の目的も教職員の超過勤務の縮減にあります。京都市には従来から、一泊の行事の場合、「一・二限カット、放課後回復措置」という校長会基準がありましたが、府立高校や府内の小中学校には具体的な基準はなく、泊行事で通常より相当時間超過勤務を行っても、ほとんど軽減措置が講じられていませんでした。今回、府教委と京教組は「勤務時間の割振り」変更という制度を活用して超過勤務の縮減に取り組むことを合意しました。
Q2今回の制度の概要を教えてください。
A 「勤務時間の割振り」の変更とは、本来一日八時間しか割振ることができない平日に、八時間以上(十二時間を上限)の勤務時間を割振り、八時間を超える勤務時間(上限四時間)を、行事の行われる週を含む四週間の間の勤務日の勤務時間から差し引く制度(但し、一時間単位で実施可)です。法令上は変形労働時間制の活用ですが、泊行事に限定した制度の運用であり本格的な変形労働時間制の導入ではありません。
Q3回復措置と「勤務時間の割振り」の違いは? 
A 回復措置も給特法に根拠のある制度ですが、「二時間の超過勤務をすれば二時間回復措置を与えるかどうかは管理職の裁量」というのが市教委の見解です。しかし、「割振り変更」は、一泊二日の場合は四時間、二泊三日の場合は八時間、勤務時間の削減を必ず行わなければなりません。今後は、行事終了後休日を挟んだ場合など、校長によって「回復措置は取る必要ない」などの対応はできません。さらに、二泊の場合(みさきの家や中学校の修学旅行など)は従来の二倍にあたる八時間の勤務時間の削減が必要です。
Q4従来あった回復措置基準(一・二限カット、放課後回復措置)はどうなりますか? 
A 回復措置として行うことはできなくなります。ただし、市教委との確認文書の中で、「今回の制度導入を機に後退しないことを校長に要請する」とされており、とりわけ、休日を挟まない場合などは従来の回復基準で「割振り」変更を確保するよう市教委が管理職に要請するとしています。
Q5宿泊行事に伴う回復措置は一切なくなるのですか? 
A そうではありません。たとえば、深夜に突発的な生徒指導が起こったり、交通渋滞などで学校への帰校が遅れた場合などは、給特法の限定四項目の回復措置は行わなければなりません。
具体例
(例)6月27日(火)・28日(水)と広島に修学旅行に行った場合

実施日(1泊2日)6月27日(火)8:30~20:30の8時間+4時間/6月28日(水)8:30~16:30の8時間(*実際にはもっと長時間勤務している実態があります。)/翌日6月29日(木)8:30~10:30~14:30~16:30* 27日はみ出した4時間を29日の8時30分~10時30分、14時30分~16時30分の勤務時間から減らします

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全体に関わる確認についてQ & A

Q1別紙「口頭確認文書」の効力について教えてください。
A 下の「口頭確認文書」は六月二十二日の交渉で、稲田教職員課担当課長と一言一句を口頭で正式に確認したことを文書にしたものです。組合は文書での確認を要求しましたが、市教委は、「府教委の通知を具体化したもので、その趣旨は同じ。文書での確認は必要ない」としたため、折衝を含めてやりとりを行い交渉での確認となりました。この文書は市教委の正式の回答であり、これを逸脱した管理職の対応は許されません。市教委も全教職員への文書の配布を認めたうえで、これに反する管理職の指導を約束しています。
Q2この制度の実施時期は? 
A 週休日の振替については、四月一日に遡って実施されます。市教委から通知が出され次第振替を行うことができます。泊行事については通知後の行事から対象となります。

給特法について

 「給特法」は1971年に36協定(超勤手当の支給に関する協定)を結ばなくても、限定的に「超過勤務命令」をだすことができること、一律4%の教職調整額を支給することを主な内容として制定された法律です。この法律は、教員から労働基準法の一部適用を除外した大きな問題を含んでいますが、文部省の訓令で、「教育職員については勤務時間の割振りを適正にし、原則として時間外勤務を命じないものとする」とし、命じることができる業務も 1. 学校行事に関する業務 2. 教職員会議に関する業務 3. 非常災害等やむを得ない場合に必要な業務とし、かつ、「臨時または緊急やむを得ない場合」に限定しています。

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