京都市の全ての教職員のみなさんへ~教育基本法改悪について~

京都市のすべての教職員のみなさんへ 

教育基本法改悪反対のとりくみへの
ご協力ありがとうございました。

 今後も憲法を生かし、すべての子どもたちに豊かに育てる学校を、ご一緒につくりましょう。

2007年1月 京都市教職員組合


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12月15日、政府と自民党・公明党は、圧倒的な反対の世論を無視し、教育基本法改悪法案を強行採決・成立させました。本来の教育基本法のどこが悪かったから変えるのか、という根本的な問題については全くまともな説明もできず、「タウンミーティング」の「やらせ」問題の発覚で「改正」の根拠も失った中での強行採決は、まさに暴挙と言わざるを得ません。私たち京都市教職員組合は、歴史に汚点を残すこの強行採決に、強く抗議するものです。

それでも変わらない大切な理念~国会審議で明らかに~
①子どもの「内心の自由」は守られなければならない。
   改悪教育基本法は、「教育の目標」に「国を愛する態度」を書き入れました。
   この条文をめぐっての質問の中で、「国を愛する心情を持つ」との項目が書かれた、ある県の通知票を見せられ、小泉首相(当時)は「これで評価するのは難しい」「こういう項目を持たなくてもいいのでは」と述べました。小坂文科相(当時)も「国を愛する態度をABCで評価するなどとんでもない」と答弁しました。これをきっかけに、他府県の小学校の通知票にも同様の項目があることが明らかになり、全国的に是正の動きが起こり、多くの学校の通知票の項目が見直されました。
   また、「日の丸・君が代」強制問題についての議論の中で、「『日の丸・君が代』を批判する世界観・主義・主張を持つ自由は子どもたちにも認められるか」との質問に対して、塩崎官房長官は「思想・信条は自由です」と答弁しました。伊吹文科相も「心の内容に立ち入って強制することはできない」と述べています。
   教基法が改悪されても、憲法19条に定められた、子どもたちの思想・信条の自由が守られなければならないことが明らかにされています。
    
②国・行政による教育への「不当な支配」は、やはり許されない。
   本来の教育基本法10条が掲げていた「(教育は)国民全体に直接責任を負って」の文言が改悪法案では削除され、一部閣僚や与党議員などからは、国や教育行政が命ずることは「不当な支配」に当たらないかのような説明が行われました。
   しかし「国であろうと、例えば一部の政党を陥れようとか、一部の宗教的、その考えをもって国が教育行政を行うということになれば、それは不当な支配になる可能性がある」と伊吹文科大臣ものべています。「旭川学力テスト事件」最高裁判決(ページ下に解説)の趣旨は、「改正」教育基本法の下でも変わらない、と政府は繰り返し答弁をしました。国や行政が教育内容に介入することは抑制的でなければならないことを、政府自身も認めました。                                     
大きく広がった「教育基本法を守れ!」の声
   教育基本法を守れ、との一点で、かつてなく幅広い教育学者など、多くの教育関係者が声を上げました。マスコミもこぞって報道し、改悪法案を「今国会で成立させる必要はない」との世論が5割を超えました。
   また、京都市内では、多くの市民・父母が参加して、全行政区に改悪反対の連絡会がつくられ、学習会や宣伝活動が取り組まれました。「憲法と教育基本法を守り生かす署名」は、市内で15000筆を越え、全国では312万筆を数えました。11月3日の京都府民集会には4000人が参加するなど、全国各地で大きな集会が開かれました。
 
憲法と教育の条理を生かした教育実践を、今後も進めよう
   教育基本法が改悪された下でも、子どもたちに「直接に責任を負って」(本来の教育基本法10条)教育を行うのは、私たち教職員です。教育は国民みんなのものであり、私たち教職員には、すべての父母・国民とともに、すべての子どもたちの「人格の完成」をめざす教育の内容を作っていく、責任と権限が与えられていることは、「改正」教育基本法の下でも変わりません。本来の教育の条理は不変であることが国会でも確認されました。
   今後、「改正」教育基本法を具体化する法案(学校教育法・教員免許法・地方教育行政法など)が国会に提出されると、報道されています。学習指導要領の改悪もねらわれています。これらの動きをゆるさず、真にすべての子どもたちにひとしく、豊かな学力を保証する学校づくりを、より多くの父母・市民のみなさんとともにすすめましょう。子どもたちをいっそうの競争に追い込む「全国一斉学力テスト」などをやめさせ、何よりも憲法を守り教育に生かすとりくみを、ごいっしょにすすめましょう。

*旭川学力テスト事件…1960年代に全国の中学校で行われていた「全国学力テスト」の実施を阻止しようとした旭川市の教職員が、建造物侵入罪などに問われた事件。
 1976年の最高裁判決は、学力テストそのものは憲法違反ではないとしたものの、「本来人間の内面的価値に関する文化的な営みとして、党派的な政治的観念や利害によって支配されるべきでない教育にそのような政治的影響が深く入り込む危険があることを考えるときは、教育内容に対する右のごとき国家的介入についてはできるだけ抑制的であることが要請されるし、殊に個人の基本的自由を認め、その人格の独立を国政上尊重すべきものとしている憲法の下においては、子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入、例えば、誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制するようなことは、憲法26条、13条の規定上からも許されない」と述べている。

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日本国憲法
第13条【個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重】
 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第19条【思想及び良心の自由】
 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
 
第26条【教育を受ける権利、教育の義務、義務教育の無償】
1.すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2.すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。