「つくる会」教科書不採択

京都市教職員組合執行委員長 本田久美子は、京都市教委の「つくる会」教科書不採択にあたって、歓迎の声明を発表しました。以下に紹介します。

京都市教委の「つくる会」教科書不採択を歓迎し、子どもたちに歴史の真実を伝える教育を進めるため今後も奮闘します。

2005年7月28日
京都市教職員組合
執行委員長 本田久美子

 7月21日、京都市教育委員会は、定例教育委員会において、2006年4月から市内各中学校で使用する教科書の採択を行いました。その中で、社会科の歴史・公民の教科書については、「新しい歴史教科書をつくる会」や自民党関係者等が採択運動を行ってきた扶桑社版教科書を採択せず、他社の教科書を選定しました。


 この教科書は、日本の過去の侵略戦争を美化し、憲法改正を強調するなど、平和を願う世界の世論に逆行するものとして、教職員や父母をはじめとする日本国内の多くの民主団体や個人はもとより、諸外国の国民・マスコミ、とりわけ第二次世界大戦での日本の侵略行為で多大な被害を受けた、韓国・中国・東南アジアの諸国から強い批判を浴びてきたものです。扶桑社の関係者が検定前の「白表紙本」を各地の教育委員会に秘密裡に持ち込む、というルール違反を行ってきたことも明らかにされています。私たち京都市教職員組合は、京都市教委に対し公正な教科書採択を求める要望書を提出しました。また教科書展示会への参加・意見書提出を呼びかけ、「つくる会」教科書を採択しないことを求める意見書が多くの教職員・父母・市民から、京都市教委に寄せられました。
 さらに、小泉首相が靖国神社への参拝に固執していることをめぐって、靖国神社が戦没者の単なる慰霊の施設ではなく、過去の日本の侵略戦争を正当化する「靖国史観」を流布し、「武勲」のあった「英霊」のみを祀る宗教施設であり、これは「つくる会」教科書とねらいを一にするものである、との批判も、大きな広がりを見せました。
 今回「つくる会」教科書が不採択となったことは、これらの京都市内・国内外のとりくみの成果であり、採択委員・京都市教委の一定の見識を示したものと、私たちは評価するものです。
 しかしながら、栃木県大田原市で「つくる会」教科書が採択され、国内各地でひきつづき採択をねらった策動が続けられるなど、全国的には未だ予断を許さない状況が見られます。京都市教委の議論でも、一部委員から「扶桑社の教科書でもよかった」「外国や一部の人の意見に左右されて意図的に外されていないか」などの発言もありました。
 戦後60年の今年、日本が過去の過ちを真に反省し国際平和の流れを推進する道を進むのか、それとも歴史の真実を歪曲する言動を繰り返し国際間に再び緊張と憎しみを生み出す道を進むのかが、問われています。
 アジア諸国の青年と交流した日本の青年たちが異口同音に語ることは、「相手の国の青年たちがみんな知っている、過去の日本の加害行為を、私たちが知らなかったことが一番ショックだった」ということです。子どもたちは真実を知らされることを求めています。過去の日本の加害の事実を正しく知り、二度と繰り返さないと誓うことこそが真の国際平和・友好につながることを、私たちは子どもたちに伝えていかなくてはなりません。
 これらの願いに反して執拗に続けられる動きを、今後も決して許すことなく、多くの父母・市民とともに、憲法・教育基本法を守り生かし、公正な教科書の採択を求め、子どもたちに歴史の真実を伝える教育をひきつづき守り推進していく決意を、私たちは表明するものです。
以上