門川教育長の、教基法「特別委員会」での発言に抗議する!

 京都市教職員組合中央執行委員会は6月9日、教基法「特別委員会」での門川教育長の発言について、抗議の声明を発表しました。紹介します。

教育基本法に関する衆議院「特別委員会」での門川教育長発言について

2006年6月9日
京都市教職員組合中央執行委員会

 5月30日、教育基本法「改正」案を審議する衆議院特別委員会に、京都市教育委員会の門川教育長が与党側の参考人として意見陳述を行いました。その中で、学校や教職員の教育論議や合意抜きのトップダウン方式で一方的に進めてきた、「京都市の教育改革」の内容を自画自賛し、こうした押しつけの「改革」や行政施策の内容が、与党の「改正」案に含まれているとして、全面的な期待感を表明しました。


 具体的には、『道徳、家庭教育、伝統文化の尊重、郷土や国を愛する態度の育成・・中略・・などが国民の教育に対する目標、理念を共有するものとして改正されることは心強いことだ』、『京都の教育改革の取り組みは、改正案の内容と軌を一にする』、『改正案に盛り込まれている教育振興基本計画に多くの期待をしている』など、今、国会審議でも国民的にも議論が分かれ焦点にもなっている、教育基本法「改正」案の中心的な内容を、すべて歓迎するという姿勢を明らかにしました。今回、現職の教育長の肩書きで行われた意見陳述の内容は、今日まで憲法・教育基本法の遵守を教職員に求めてきた教育長として不見識であり、断じて容認されるものではありません。同時に、私たちとの交渉の席上で、「憲法・教育基本法にもとづく民主教育を実施する」ことを確認してきた姿勢を覆すものであり、京都市民や父母・教職員に対する重大な背信行為です。
 また、『徹底した論議をし、すべての学校で国歌君が代が立派に斉唱され、不起立の教職員は一人もいない』などと陳述していますが、これは全く事実に反するものです。1986年から京都市教育委員会による、卒・入学式に「日の丸・君が代」の押しつけが行われたとき、多くの市民、父母・教職員が押しつけ反対の声をあげ、様々な取り組みが行われました。しかし、こうした声を一切無視し、管理職を徹底的にしめつけて、式場の飾り付け、式次第の記載事項、日の丸の旗の設置、式場の座席配置の形式にいたるまで指導し、教職員には処分も辞さない姿勢で強制しているというのが事実であり、論議を尽くしてあたかも京都市のすべての教職員が、「日の丸・君が代」導入を容認しているかのような発言は許すことはできません。市教組は、市高教組とともに6月7日付けで門川教育長に対して文書による抗議申し入れを行いました。
 門川教育長は、今進めている京都市の「教育改革」が、あたかも教育基本法の理念に即しているかのような表現を行い、組合の交渉の席上でも「教育基本法を変えなくても京都市の教育改革は進められる」などとしてきました。しかし、市内中心部の統合校や西京中高一貫校に見られるように、一部の学校に巨額の財政支出を行い「モデル校」や「エリート校」づくりをおこない全国に宣伝し、他方で一律に学校運営費を削減し教育条件の低下を招いています。中でも、西京高校付属中学校では同じ公立中学校でありながら、入学選抜が行われ、カリキュラムも他の中学校とは異なるなど、まさに公教育による格差づくり・エリート教育が行われています。これらの「モデル校」・「中高一貫校」設置は、どこから見ても「教育の機会均等」を破壊するものです。
 これまで市教委は、すでに「格差」が解消しているにもかかわらず、同和地区児童・生徒のみを対象とした「学力向上を至上目標」にした同和施策を行い、現在でも同和奨学金を実施しています。こうした「格差解消」と称する教育施策と、今の格差拡大・エリートづくりの教育施策の関係をどう説明するのでしょうか。
 また、市教委は、この間の「二期制」・「授業日数205日以上」の規則化、「京都ジュニア検定」の一斉実施など、教育課程や教育内容に関わる課題を一方的に学校現場に押しつけるなど、教育の管理・統制を強化しています。京都市では、1986年の「日の丸・君が代」の学校への押しつけ以降、教育施策の一方的な押しつけや教育内容に対する管理・統制が強められ、子どもを中心にした自主的・創造的な教育実践が押しつぶされてきました。これこそ、教育基本法第十条が禁止している「不当な支配」と言わなければなりません。さらに、教育基本法には、「教育行政は必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない」とされ、国や教育行政の教育内容への介入を戒めています。こうしたことからも、京都市教育委員会の姿勢は明らかに教育基本法の理念に反するものであり、強権的な教育行政を直ちに改めるべきです。
 今、すすめられている京都市の「教育改革」が、与党・文科省が教育基本法改悪後にすすめようとしている、教育施策を先取りしたものであることが、今回の門川教育長の発言で明らかになりました。まさに与党・文科省と一体となった戦後の民主教育の破壊の動きを、京都市から全国に発信しようとするもので断じて許すことはできません。
 京都市教組は、多くの京都市民や全国の仲間にこうした京都市の実態を知らせるとともに、何としても教育基本法「改正」案の廃案と、京都市の教育行政の転換に向けて全教職員、父母・市民のみなさんとともに奮闘する決意です。
以上