超過勤務の是正を求める京都市教組超勤訴訟について

京都市教組は「超過勤務の是正を求める京都市教組超勤訴訟」京都地裁判決に対する声明を発表しました。

「超過勤務の是正を求める京都市教組超勤訴訟」
京都地裁判決に対する声明
・・・一部教育行政の違法性を認める画期的判決・・・

 

2008年4月23日
京都市教組超勤訴訟原告団・弁護団
京都教職員組合・京都市教職員組合

本日(4月23日)、京都市教組組合員9名(塩貝光生団長)が、「超過勤務を是正して、もっと子どもたちと向き合う時間を!」と京都市を相手に訴えた超勤裁判で、京都地裁は、原告の請求を一部認める判決を下しました。

判決は、過労死ラインを超える過酷な教職員の勤務と超過勤務を余儀なくされている実態に対して、「教育職員についても生命及び健康の保持や確保(業務遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことのないように配慮すること)の観点から勤務時間管理をすべきことが求められている」、「被告(京都市)は、教育委員会や校長を通じて教育職員の健康の保持、確保の観点から労働時間を管理し、同管理の中でその勤務内容、態様が生命や健康を害するような状態であることを認識、予見した場合、またはそれを認識、予見でき得たような場合にはその事務の分配等を適正にする等して当該教育職員の勤務により健康を害しないように配慮(管理)すべき義務(勤務管理義務)を負っている」と判示し、原告寒川について、「健康の保持に問題になる程度の少なくない時間外勤務をしていたことを踏まえると、それによって法的保護に値する程度の強度のストレスによる精神的苦痛を被った」とし、勤務管理義務違反を認めました。
一部とは言え、教育行政の違法性を認めたことは大きな前進と言わなければなりません。特に、勤務時間管理の必要性や長時間労働に対する安全配慮義務を正面から認めたことは、京都市教育委員会が「教員の勤務は時間的計測になじまない」と述べて、現在に至るも教職員の勤務実態調査や勤務時間管理を行っていないことを厳しく断罪したものと言えます。
しかしながら、給特法について、教職員の「自由意思を強く拘束するような状況下でなされていた」場合以外は、時間外勤務は自主的、自発的、創造的な職務遂行として違法にならないとの従来の解釈を踏襲し、原告らの時間外勤務の違法性を認めなかった点は、極めて不十分なものと言わなければなりません。
私たち原告団・弁護団及び教職員組合は、判決の積極面を生かすとともに、事実誤認や誤った解釈については、引き続きその是正求めてたたかいを継続するものです。

判決は不十分なものではありますが、この4年間の9人の原告と京教組・京都市教組のたたかいは、全国から注目されるとともに、教職員の超過勤務をめぐる状況に大きな変化をつくり出す力となりました。
第1に、文部科学省が40年ぶりに教員の勤務実態調査を行い、マスコミも教師の働き方の問題を大きく報道するなど、教職員の働き方の問題が大きな社会問題となってきたこと。全国調査の結果を報道した朝日新聞は、「先生へとへと どう解消」との見出しをつけました。さらに、調査に携わった小川東大教授は、「先生の長時間勤務なしには、学校経営が成り立たなくなっている。こんなに休息時間が少ないのは労働基準法違反の状態だ。」とコメントを述べています。第2に、行革推進法で、教職員削減が決められている中、文部科学省が教員増を要求したこと。さらに、京都市では、小学校1、2年の35人学級、中学校3年生の30人学級、小学校1年生に28時間の非常勤講師を配置し、複数指導を実現、すべての普通教室(小・中・高校・養護学校)にクーラー設置など、大きく教育条件の改善が実現していること。第3に、京都市教育委員会を含む教育行政が、研修や研究指定の削減や提出文書の削減、預かり金等の実務の軽減など、超勤の縮減に足を踏み出したこと。第4に、労働安全衛生法の改正や厚生労働省の通知などから、教職員の勤務実態の把握や長時間労働を余儀なくされている教職員に対する「医師による面接指導」の実施が具体化されつつあること。第5に、一部マスコミ報道で文部科学省自身が時間外手当導入を検討していること、など給特法の改善が現実的な課題になりつつことがあげられます。

私たちは、このような運動の前進に確信をもつとともに、大幅な教職員増の実現、その仕事の重要性や困難性に応じた給与水準の確保(教職調整額4%維持など)と、労働時間の把握と労働基準法37条に基づく超過勤務手当制度実現をめざし、全国の教職員、父母・市民とともにたたかいを前進させる決意です。引き続きのご支援・ご協力を呼びかけるものです。