「教育再生会議第2次報告」についての京都市教組見解

「教育再生会議第2次報告」についての京都市教組見解

 6月1日に発表された、「教育再生会議第2次報告」について、京都市教職員組合は、6月7日に以下の見解を発表しました。各職場でもぜひ論議を深めて下さい。


教育再生会議第2次報告について(見解)
                                          京都市教職員組合

 6月1日、安倍内閣の諮問機関である教育再生会議が第2次報告を決定しました。報告のポイントは、①授業時数10%増の具体化(夏休み等の短縮、土曜日授業の実施など) ②「徳育」の教科化 ③メリハリある教員給与体系の実現 ④大学の9月入学の大幅促進⑤国立大学の大胆な再編統合、競争的資金の拡充などです。 

 「授業時数の10%増」では、学力保障に一番有効な少人数学級には背をむけて、授業時数1割増で学力向上をめざすというのものであり、教育再生会議の委員からも、授業時数と学力の関係は「実証的に検証されていない」と批判がでており、科学的根拠も示さず提言すれば現場の困難がますだけです。現に京都市ではその先取りとして、授業日数205日以上、帯時間の設定、週1時間増、夏休みの補習、などが、授業時数1割増に向け、教育委員会から問答無用で押しつけられています。その結果、子どもたち・教職員は追い立てられ、ゆとりが奪われています。
 「徳育の教科化」では、国が検定する教科書などで特定の価値観を子どもに押し付けるねらいがあり、憲法が保障する「思想、良心の自由」に真っ向から反します。マスメディアも、「教科にすれば文部科学省による統制が強まり、微妙な価値観を含む道徳教育が硬直し、画一化する懸念がある」(「日経」6/2日付社説)と批判しています。しかも、政府が押し付ける特定の価値観が復古調であることにも「徳育が昔の『修身』のような授業として復活を目指すのなら、批判は相次ぐだろう」(「東京」同日付社説)ときびしい目をむけています。さらに、今、過去の侵略戦争を「アジア解放の戦争だった」と賛美する靖国DVD「誇り」(日本青年会議所作成)を使う「近現代史教育プログラム」が、文部科学省の委託事業として採用され学校に持ち込まれています。「戦争賛美の教育を押し付けるな」という声があがっているように、侵略戦争を支えた戦前型の教育にもどることは決して許されるものではありません。市民道徳の教育は、憲法にもとづき基本的人権の尊重を中心に、自主的にすすめるべきものです。特定の価値観をおしつける「徳育の教科化」には絶対反対です。
 報告は柱の一つに「財政基盤」をすえましたが、教育予算を増やすのではありません。「効率化」をあげて差別的な配分に徹しています。「メリハリある教員給与体系」は、上からの評価で給与に格差をつけるもので、教員の目を行政や管理職にむけさせ、子どもとの時間を奪ってしまいます。
 教育再生会議が、委員に教育研究者を加えず、マスメディアにも会議を公開していないことに批判が起こり、「会議を公開」し、「教育研究の専門家を置く」よう求める声もあがっています。
 「競争とふるいわけ」の教育を助長し、教育への国家統制を強める改悪教育基本法のいっそうの具体化をはかろうとする今回の報告は、断じて許せるものではありません。 
 安倍内閣は、1月の教育再生会議第1次報告の内容を盛り込んだ教育改悪3法案の今国会成立をねらい、さらに第2次報告で打ち出した「授業時数の10%増」「徳育の教科化」について学習指導要領などの改訂を来年3月までに行う方針です。 
 市教組は、改悪教育基本法の具体化ではなく、憲法にもとづく教育を父母・市民とともに創造していくことに今後も、全力を尽くしていきます。 

                                                                       以上