全面勝利判決


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大阪高裁再び京都市教委を断罪!
高橋智和さんの分限免職取消 全面勝利判決
二〇〇九年六月四日、大阪高等裁判所の第一〇民事部の赤西芳文裁判長は、都市の控訴を棄却し、京都市教育委員会が高橋智和さんに下した分限免職処分を 取り消す判決を言い渡しました。
裁判長の「本件控訴を棄却する」の主文が読み上げられたとたん、法廷の内外 は大きな拍手に包まれました。

たたかいの経過
高橋智和さんは、二〇〇四年(平成十六年)四月一日付で京都市立学校教員に正式採用され、子どもたちの教育に日々精励してきました。
しかし、京都市教委は校長などの一方的な情報を根拠に、事実関係の調査や本人の弁明も聞かず、二〇〇五年(平成十七年)三月三十一日付けで、高橋さんへの分限免職処分を強行しました。
高橋さんは、二〇〇五年五月に処分の撤回を求めて京都地裁に提訴し、京都地裁は二〇〇八年(平成二十年)二月二十八日に分限免職処分を取り消す判決を言い渡しました。これに対して京都市が控訴し、本日、大阪高裁での判決を迎えました。

画期的な大阪高裁判決の内容
判決は、第一に、条件附採用期間中の教員を、「教員として十分な経験を経た者ではなく、今後研さんに努めて成長していく過程にある者」とし、「当該期間中の職務成績が経験のある教員に比した場合、必ずしも十分でなかったとしても、直ちに分限免職の対象とはならず、教員として将来成長していくだけの資質・能力を有するか否かという観点から判断すべきである」との新採教員の分限免職基準を示しました。
第二に、事実認定については、基本的に京都地裁の判断を維持するとともに、京都地裁で判断しなかった事項についても、「客観的な裏付けが乏しい」「教員としての能力・適性に直ちに影響するとは言えない」などの理由で、市教委のすべての主張を退けました。
第三に、処分が適法かどうかの判断にあたって、①職場における適切な指導・支援体制があること、②本人が改善に向けて努力をする機会が付与されていること、③ある程度の整合的・統一的な評価基準が存在することが前提として必要、としました。その上で、かつ「一定の時間の経緯の中で評価すべき」であり、「主観的な評価の余地のある出来事を評価対象とする事は出来るだけ避けるべき」とし、管理職や教育行政の高橋さんへの恣意的な評価や判断を厳しく批判しました。
第四に、高橋さんが児童や保護者から信頼を失った一因として、管理職の高橋さんへの姿勢に問題があったこと、支援態勢が十分でなかったこと、を断罪しました。

高裁判決を生かす学校づくりを!
高裁判決は、新規採用教員の分限免職に一定の基準と前提条件をしめし、任命権者の裁量に歯止めをかけたこと。さらに、評価において主観的要素をできるだけ排除することを求めるなど、従前の判決から踏み込んだ内容となっています。
高裁判決の指摘は、先に来日し、日本政府と都道府県教育委員会に勧告を行ったCEART(ILO・ユネスコの共同専門家委員会)が指摘した「客観的基準と適正手続きを保障する制度への見直し」など、国際機関の指摘とも合致するもの です。
この判決は、新採教員を含むすべての教職員が専門職としてその地位が尊重される学校づくりや、同僚性を基礎にした共同の教育活動の礎を築くものです。

市役所前で宣伝行動
判決後直ちに、高橋さん・全教・京教組・市教組代表が市教委への申し入れを行うとともに、五日早朝は、京都総評、京都市職労などの支援をうけて、「上告するな」の宣伝行動に取り組み、一日も早い高橋さんの職場復帰をめざしています。

■皆さんやりました!勝訴です■原告の高橋 智和さん
京都をはじめ全国の皆さんに励まされ、支えられてこその日々…。提訴してから四年を超え、ついにここまで来ることができました。本当にありがとうございました。
しかし、全国の教育現場では新採とベテラン、正規と非正規を問わず、多くの教職員が不当な扱いや評価に晒されながらも、日夜教育実践を重ねておられます。だからこそ!市教委に上告を許さず判決を確定させることで、この勝訴を私一人だけのものとせず、皆さんの日常に根付かせていくことこそが急務です。ぜひ、この取り組みに力をお貸し下さい。
負けたら終わりじゃなくて、やめたら終わりなのですよね。私も子どもたちと、仲間たちのために頑張ります。

■京都市教職員組合執行委員長 新谷 一男
この判決は、京都地裁に続いて大阪高裁でも、高橋さんを教壇に戻せと判断したものです。採用されたら一〇〇%の仕事を求められ、自信のないものは教壇を去れという、市教委の姿勢を厳しく断罪したものです。
何よりも、この勝利判決は、高橋さんのがんばりと弁護団のチームワーク、そして、全国から寄せられた一万八千筆に及ぶ要請署名に見られるように、多くの人たちの支援によるものです。
また、全国で毎年三百人を超える新採用の教員が教壇を去っていますが、その人たちを励ますものです。上告されないように、全力でがんばります。

京都市立小学校新採教員分限免職事件 大阪高裁判決について 弁護団声明(抜粋)
二〇〇九年六月五日
京都第一法律事務所
弁護士 村山 晃
弁護士 藤澤眞美
弁護士 渡辺輝人
弁護士 岩橋多恵

事案の概要、京都地裁の審理と判決の内容、大阪高裁の判決は略
大阪高裁判決の評価
昨今、教員の働き過ぎ、過労死、うつ病等の疾病による休職等が社会問題化しています。新採教員もすさまじい過労状態におかれ、十分な教育実践もままならず、なかには精神疾患を患う中で、教育委員会の恣意的な評価によって「不適格」の烙印を押され、「依願退職(という名の退職強要)」したり、分限免職を受け、教壇を去らなければならない事態が多数発生しています。
大阪高裁判決は、高橋さんに対する処分を取り消した京都地裁判断を維持した点自体で画期的ですが、それだけに留まらない意義を持っています。大阪高裁判決は、新採教員の評価のあり方について、従来の判例よりかなり踏み込んだ判断を行いました。これまで各地の教育委員会が極めて恣意的に行ってきた新採教員に対する評価を厳しく戒め、客観的な基準と継続的な事実評価、経験の蓄積・研さんによる改善可能性の有無の判断を求めたものであり、述べられていることは当たり前のことでありながら、従来の判例と比べれば極めて画期的な判断をしたと言えます。
また、評価の前提として「本人が改善に向けて努力をする機会を付与されたこと」に言及している点も高く評価できます。この考え方を敷衍すれば、新採教員が極めて多量の業務を強いられ、自己研さんの機会すら奪われている状況で適格性の評価を行ってはならないことにもなり得ます。この判決は新採教員の過労が横行する現状自体に警鐘を鳴らしたものと言えます。
以上